ピピピピピの爽やかな日記帳

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親の経営コンサル会社で働く20代後半、社内ニートの話

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【KOK2016優勝者】天才ラッパー・GADOROについて【1stアルバム「四畳半」リリース】

 UMB三連覇のR指定に「チプルソの丸パクリ」と貶され、元彼女に莫大な借金があり、刑務所に数年ぶち込まれていた父親がいるなど、散々なリアルを生き抜いてきたGADORO(以下ガドロで統一)が、『KING OF KINGS 2016 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL』にて悲願の優勝を果たした。

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(KING OF KINGS公式ツイッターより)

 優勝賞金150万円とプロップス、その他スポンサーからの賞品を獲得。

俺は幾分も夢を見てきたさ でもさ安室奈美恵*1じゃないけどさ 夢は叶えるもんだよな 見るもんじゃねぇよな だからこそ叶えてぇ 俺の本心 人生一回 たった一日で変える

 ガドロの最終バースは、フィクションより良く出来ていた。
 輪入道との決勝が終わると間もなく、会場中に拍手が起きた訳だけれど、それは決して形式的なものでも、強制されたものでもなかった。
 リング上で展開する紛れもないヒップホップ・ドリームに対する、自然発生の賛辞であった。

 この日のガドロのバトル全てにいえることだが、信者のお陰で勝ったという雰囲気はまるでなかった。

 生き様だけでもない。実力だけでもない。韻踏みだけでもない。
 HIPHOPを支配下に置くような生命力で猛者をなぎ倒し、チャンピオンになった。

(常勤医というのはラップ用語でも、ガドロの本業が医者な訳でもなく、正社員という名の業界人が生み出した誤字(正しくは賞金)である)

 このようにガドロは今年一年掛けて、赤字の人生を劇的にひっくり返した。
 宮崎の田舎でくすぶりながら己を鍛え上げて、革命を実現。

 全てを投げ打って這い上がるストーリーこそが、HIPHOPなのだと信じさせてくれた。

 人生をラップに捧げて自己実現をやってのけた、自称人間のクズ。
 やはり自分が底辺――奈落の底にいることを悟り、なりふり構わない勢いを獲得した者は、強大なドラマを生み出す資格も手にするのだろう。

 ガドロ本人は天才というよりも努力型のラッパーである訳だが、ここまで観衆に夢を見せてチャンピオンベルトを手にしたのだから、結果論として天才なのである。
 チクセントミハイが、『成功を収めた一人の芸術家は、かつて彼と同等のすばらしい芸術家が少なくとも千人はいるだろうと悲しそうに語ったことがあった――しかし、彼らは無名で、その作品は評価されていないのである』と本に書き残したのだが、実はスキルのある人間など腐るほど存在している。
 であるから天才というのは、神に愛されて偉業を達成するという、幸運を内包した者のことを指しているのではないかと思う。
 結果の伴っていない人気者は、ただのカルト教祖なのだ。

 この日ガドロは、本物になった。


【第8試合】SIMON JAP VS GADORO|フリースタイルダンジョン東西!口迫歌合戦|AbemaSPECIAL

(年末に行われたこちらの試合の中で、『人間性は元々ねぇから ああいう「クズ」っていうクソダセェ音源を作った お前とは全然違ぇんだ 分かるだろ? 自分なりの言語を吐いてる』と発言していた通り、己を出し切ってKOKの覇者になった)

KING OF KINGS 2016 試合解説

※ガドロの言葉は赤文字にする。

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(KING OF KINGS公式ツイッターより)

対 CIMA戦

『今日はビート上に乗りこなした瞬間に出る言葉分かるだろ ビーツの裏側』とガドロはフロウ勝負を仕掛けたのだが、華麗な韻の踏み方を期待している観客の前でこういうことをすると、盛り上がりどころを共有出来ず、自滅してしまうリスクがあるから、ワンバース目は見ていてヒヤヒヤした。
 対するCIMAというラッパーは、マイペースの権化みたいなもんだから、調子が悪いということがほとんどない。
 期待通りか、それ以上のものを必ず持って来る。
 コンプライアンスを遵守する運ちゃん的存在のため、客は気楽に声を上げることが出来るのだ。
『初っぱなからガドロ しどろもどろ マグロ不感症 俺は燃やすプラント マイクまるでブランコ 即この場、乱闘 上等、大阪ちゃうで兵庫 go zone』
 予想通りシーマは上記のように、ライムを丁寧かつ鋭くリズミカルに連打した。
 これに対してもガドロは、『俺みたいなフロウが出来ないならばこの場で終了だぜ』と、音乗りの技術を提示してしまう。
 今まで韻を踏むことで食い扶持を稼いできたようなガドロがこの戦法を取ると、下手すると事故死するのではないかと不安になった。
 不穏な空気が漂い始めた頃に、案の定、言葉に詰まってリズムが崩れそうになってしまったのだが――どんぴしゃなタイミングでDJトラブルが発生。ビートが消滅した。
 なんたる幸運。ガドロの優勝が運命付けられているかのような偶然。
 一拍の間を置いたことで冷静さを取り戻したガドロは、『マリファナ三昧 何かが足んない 上方漫才みたいなスキル』と的確に韻を叩き込むことに成功。
 ライム連打をするには、脳のリラックスが肝心要であるから、ビートのトラブルでちょっと気が抜けるようなインターバルがあると、ワードの連なりが閃いて、一気に畳み掛けられるモードになる。
 つまりガドロは、事故る瞬間に巻き戻しが起きて、生き残るために未来を改変する主人公みたいな状態になったという訳だ。
 そこからはライマーらしく、『兵庫王者 情報操作しながらでもやってく 強行突破』と正攻法に踏みまくり、客を唸らせることで勝った。
 この日、最も危なかったのはこの初戦である。

対 裂固戦

 この二人のバトルは凄まじく、ライムの闇鍋ちゃんぽん状態だった。
 しかしながら決定的な違いがあった。
 ガドロは生き様の表明をする材料として韻を用いたのに対し、裂固は大量の韻でお手玉をしている大道芸人に成り下がっていた。
 言うなれば、リアルストリートVSエンターテイメント。
 ガドロは、『ベスト8 テスト勉強からし直しなクソガキが』と、ライム連打の終結にシャウトとメンチ切りを組み合わせ、初っぱなから上下関係を作り出し、上段から手加減なしに裂固を成敗する勢いがあり、これは間違いなく勝つだろうなと確信させてくれる試合運びだった。
『フライパン? お前がどんくらいか お前が高山ならば、俺はドンフライか? ボコボコにしてやるぜ顔面』などと、調子が良いときのガドロはこのように、定めた着地点へ向かって、寄り道せずに突き進むような韻の踏み方をするから、客も急浮上して炸裂するような歓声を上げられる。
 主張にブレがなく、直線上のライミングを貫徹させていた。
 ここ最近は、ただ韻を踏むのが上手いラッパーなんて腐るほどいるから、それじゃあ通用しなくなってきている。
『ありがちな韻を踏むガキが一人 明日命すらもないぜ、今日が旅立ちの日』
 ガドロの韻って、言葉を固めて停止させて改めて読み返しても、まさに詩と呼ぶに値するものが多い。
 たとえいくらかはネタだとしても、リリカル的な価値が生じているから、観客の心を打つ。
 そして言葉を放出することに躊躇がないというか、オープンマインドというか、ダサいとかキザ過ぎるとかそういう要素も度外視にして、等身大の自分をぶちまける度胸を持っている。
 若手でそこそこ知名度のあるチャラついたラッパーなんかだと、お洒落のために本音を隠して、嘘の自分に陶酔するありふれたつまらない奴らが多々いるんだけれど、ガドロはそれとは対極の場所――とどのつまり本性を剥き出しにして戦っている。
 MCバトルの世界も本物志向になって来ているから、リアルじゃないと最高峰のトーナメントでは勝ち上がれない。
 そうでありながらお飾りのラップしか出来ない人間でも、動画配信が当たり前になった時代のお陰で、さもカリスマかのように見られている訳なのだが、そういう奴らは結局のところ、like a違法アップロードなガキの群れに画面を通してしか認められない。
 やっぱりバックストリートな部分、見せたくない本心も含めて、ことごとくをぶちまけて行くラッパーは強い。
 相手の裂固も、『どんだけやってもしない瞬き、お前の武器 心臓到達しない刃渡り』と熱い反抗精神を露わにしたのだけれど、途中から韻を踏むのが目的化してしまい、勝ち上がるためではなく、韻を踏むために韻を踏んでしまっているのが目に見えた。
 たとえば、『当然のよう 俺は勝つぜ まるで温泉旅行にでも行きたい気分だねぇ~~』というような間に合わせの韻もそうであり、これに対してガドロは明らかなる即興で、『温泉旅行じゃない いかれてる喧嘩強い鳳仙高校*2みたいな感じ 俺が頂点を取る』という三連打を、今日ここに来た意味を訴えかけながら放ち返した。
 ワンバースに存在する熱意(今日一日で人生をひっくり返すという想い)の含有量がまったく違ったのだ。
 しかもそこに加えて、『ガドロが勝つのが当然のよう、分かるだろこれが押韻主義』と、まだ未熟なライマーに教え諭すようなオチも付けたのだから、見事という他ない。
 そして、『こいつある意外性? 二面性 起源前三世紀から出直せ』という皮肉まで効かせる鬼の無双っぷりであった。
 こうした点から分かるようにガドロは、言語センスが上昇し続けているラッパーである。
 涼しい顔した天才キャラとは違う叩き上げのラッパーだから、言葉の収穫に対する努力が物凄まじく、伸びしろという評価軸で話すなら、HIPHOP業界随一といえるだろう。
 裂固の、『俺が歴史を塗り替える ばっちりこの場所で死体を積み上げる』なんかは洒落ているし、本来は効果的であるライムであると思われるのだが、裂固のバトル界の立ち位置からして下克上を狙うほど不遇な扱いを受けている訳でもないし、むしろ彼は勝ち組だから、どうしてもその言葉は薄っぺらくなってしまう。
 年収2000万円の人間が、「貧困地獄を這い上がってみせる!」と叫んでいるようなものだ。
 現時点でのポジションとワードが噛み合っていないから、観客は押韻技術点の評価しか出来ない。
 チャンピオンの中のチャンピオンを決めるような大会だと、裂固みたいな中途半端に恵まれているラッパーはすこぶる不利だと思われる。
 ガドロも準決勝で、『mol53やR指定との過去の黒歴史 今日は真の歴史で塗り替えてやる』と口にした訳だが、現時点での生き様と発言が綺麗に融合しているから効力を発揮している。
 彼は2013年くらいから、名前が少しずつ売れ始め、この日に至るまで涙を呑む敗退を重ねているし、その事実を知っているファンが大勢いる。
 つい最近のフリースタイルダンジョンでも、R指定にけちょんけちょんと貶されたのもあって、ガドロ=リベンジに燃える男、というイメージ像が、観客の頭の中を支配するようになった。
 しかもコミュ障(控え室でイヤホンをして塞ぎ込んでいる)、多額の借金があるという情報がダダ漏れになっているから、完全に成り上がるしか道がないという、確固たるキャラクターが出来上がっていた。
 人類が普遍的に好きな、負け組の人間が勝ち組へと上り詰めるストーリーが始まったという訳だ。
 こういう期待が掛かっていたから、歴史を塗り替えるという発言に破壊力が備わったのだ。
 であるから、どんな手を使っても日の目を見てくれ、と心から応援する人がわんさかいた。
 マイナスをプラスにするため這い上がる人間の猛烈さが迸っていた。
 そのようにして裂固を叩き伏せた。

対 ACE戦

 延長にもつれ込んだ試合ではあるのだけれど、ACEは完全に売れっ子の芸能人的なスタンスで話しを進めてしまっていたから、ガドロの思う壺であったと思われる。
 もう完全に会場全体が、今まで恵まれなかったラッパーが、ヒップホップ・ドリームを達成する瞬間をこの目で見届けたいというムードに包まれていた。
『おまえみてぇによ、アイドルみてぇによ、芸人となんかイザコザやってるような奴には絶対なりたくねぇんだ 過ち繰り返しこの場所に辿り着いた 見据えてるもんがお前とは端からちげぇんだ』
 一般HIPHOP庶民の気持ちを代弁するように、熱く捲し立てるガドロ。
 そうでありながら冷静さも失わず、『さながらKREVAのスタイル 淡くほろ苦い フレイバーオブライフ 宇多田ヒカル 今日が俺がヤバイってこと噂になる』とライム的な本領を発揮して、差を付けていった。
『ACEのテク キングのエース リリックのセンスも足りてない 秘密のベールに包まれてる シルクドソレイユ』なんかも、ACE迎撃用のネタである可能性が高いにしても、聴いていて気持ちが良い。
 そしてこの試合くらいから、ガドロは生き様の滲み出るパンチラインを繰り出し始めた。
『知ってるか? 飛行機がなくたって空は飛べるんだぜ 俺の言葉だけでな』
 これは合法的にハイになること、マイク一本で勝ち上がることを匂わせる暗喩だが、やはり表現力が他のラッパーの中でも段違いに優れている。
 嘘偽りのないものほんの気持ちで勝利した。

対 輪入道戦(決勝)

 小手先の技術ではない、この瞬間に発火させる想いがぶつかり合う名勝負であった。
 輪入道が、『勝ちてぇと思ってねぇ奴なんていねぇ 負けようと思ってマイクを持つ奴はいねぇ』と27年間の人生が凝縮された言葉を放つと、ガドロはすかさず、『ぶっちゃけた話しを言うけどよ 何度も幾度も逃げてきたよ でもな逃げたところは後ろじゃねぇ 俺はマイクロフォン一本 前に逃げてきたんだよ これが俺の生き様だぜ』と育んできた魂の情念をぶちまけた。
 そして最後の最後にガドロは、『俺は幾分も夢を見てきたさ でもさ安室奈美恵じゃないけどさ 夢は叶えるもんだよな 見るもんじゃねぇよな だからこそ叶えてぇ 俺の本心 人生一回 たった一日で変える』と言ってのけた。
 フリースタイルラップという狭い箱だけに囚われず、一生涯の全てを叩き込むようなラインだった。
 流行りのバトルMCという肩書きで着飾った、単なるHIPHOP読者モデルに成り下がっている奴らとは次元が違った。
 ガドロは喉が弱く、延長戦にもつれ込みながら決勝へ向かうと、大抵の場合、喉がカスカスになってスタミナ負けするラッパーだ。
 だから、なるだけ韻の連打とパンチラインの応酬で早期決着、駆け足でのチャンピオンを目指して欲しかったのだが、今回はそんな心配などする必要はなかった。
 喉が潰れそうになっても、強引に声を絞り出して、魂で勝利をもぎ取る執念のレベルが段違いだったからだ。
 ある存在が天才かどうかは、オーディエンスが決めることだから、これだけ人生の全てを注ぐ熱量を見せつけ、ドラマチックな展開を力で作り出したガドロは、天才と呼ぶにふさわしい。
 正真正銘の下克上、これぞ金字塔、人間人生の芸術を開花させながら王座に就いた。

KING OF KINGS 2016 大会全体の感想

 運営側に些細な不手際(判定ミス・演出上の失敗)があって、少々グダついた印象もあったのだけれど、ガドロをはじめとしたプレイヤーが一級品であったから、そんなことはどうでも良くなるレベルに素晴らしい大会だった。

ameblo.jp

僕、ダースレイダーはKOK PRODUCERを辞めることにしました。
社長の漢に事情を説明して辞職を申し出ました。
なお9SARI  GROUPの職務に関しては社長にクビを預けることになります。

 一つ残念なのは上記のような公式発表が打ち出されてしまったことであり、対CIMA戦で判定ミスがあり、本当は延長戦をやらなくてはならないのに、ガドロを勝ちにしてしまった責任を取るため、ダースレイダーは運営から手を引くことを決めてしまった。

 過去にも予選で判定ミスがあって、結果を出した後に覆して、再度バトルをして貰うようなことがあった。
 高揚感のある会場では、即座の判断が難しくなるのだろう。
 確認者を3人くらい用意するべきなのかもしれない。

 個人的にダースレイダーのキャラクターのお陰で、KOKに和やかな空気が醸成されていると思うから、責任の取り方として身を引くのではなく、むしろ今まで以上に激しく運営に関わった方が良いのではないかと思った。
 ラッパーも即興、DJも即興、運営も即興なのだから、過ちが生まれてなんぼであるし、そこからの改善に力を入れる常なる上昇を目指して、進んで欲しい。
 正直ダースレイダーが、KOKプロデューサーから責任を取って引退する意味はまるでないと思う。
 こういう結末を、誰も望まない引退劇というのではないか。 
 責任を取って、責任を取って辞めることを、辞めるべきだと思った。

一回戦で負けた紛う事なき天才ラッパー・Lick-Gについて

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(KING OF KINGS公式ツイッターより)

 ガドロが物語上の天才だとすれば、Lick-G(以下リックジーに統一)はバックボーンなどを抜きにした天才といえる。
 即興センスのみを秤に掛けて考えると、弱冠17歳(現役高校生)ながら、日本一と評されているR指定と肩を並べるレベル、もしくは飛び越えるスキルを持っている。

 だけれど悲しいかな、規模の大きな大会での優勝経験はない。
 なぜなら、小綺麗な天才はドラマチックじゃないからだ。

 今大会でもリックジーは、一人だけ浮いていた。
 観光に来たジャスティン・ビーバーみたいな感じだった。

 輪入道との試合では、最初から足を交差させるイケメンモデル立ちをしていて、第一声からいきなりライム読みして反感を買い、それでも飄々としたまま、『なんだケミカルでも? 俺のマイクはテキサスチェーンソー 俺に触れるな液体窒素 適材適所 敵対勢力を撃退せよ』という規格外の破壊力を持ったライムをぶち込んで、颯爽と帰宅した。

 リックジーは惨たらしいほどの天才だから、一般庶民である観衆には扱いが分からないのだ。
 ゆえにストーリー性を求められる大会ではこういったタイプの、真の天才は天才ゆえに王者になれない可能性が極めて高い。
 才能が溢れ過ぎているゆえに、物語不要の強者になってしまっているからだ。

 他人が土くさく、血なまぐさい十年の努力をしてやっと手に出来るような力を、半笑いのリックジーは生まれながらにして持っている。
 生き様が軽やかで美しいという、逆ハンディキャップ。

 リックジーはそういった意味では報われない。
 だからバトルを引退したくなるのだろう。

 明らかに一人だけ格が違うのだから、バトル業界は彼に大金を流すなどして、引退を許さないように、権力でどうにかこうにかして欲しいほどだ。
 リックジーが引退してしまうのと、核兵器が根絶やされるのは似たようなもので、極端に社会からパワーが失われる。

 彼は背水の陣を敷いたことがなくて、既に敷かれたレッドカーペットの上を優雅にスキップするような王子様なのだ。
 生まれ落ちた先が王座であったような存在だから、社会に存在する人工的な物語の王座には心惹かれない。
 単刀直入にいってしまえば、リックジーがKOKやUMBで優勝したところで、何も変わらない。
 既にチャンピオン視されている存在だからだ。
 もしかするとリックジー本人も、どこで優勝しようが、どこで歓声を貰おうが、心のどこかで、ありきたりな日常の一ページにしか思っていなくて、そこまで大きな嬉しさはないのかもしれない。
 真の天才は無冠が似合う、そう考えさせられてしまった。


Rude-α vs Lick-G /超ライブ×戦極 U-22 MCBATTLE 2016 TOKYO

ガドロについてのまとめ

 僕は既に、1月11日にリリースされるファースト・アルバム『四畳半』を注文済みだ。

四畳半

四畳半

 

  昨日、発送完了のメールが届いたから、明日か明後日には手に入ると思う。
 収録された12曲ともフィーチャリングは皆無らしいが、それは逆にガドロそのものの音源を聴けるということで大変ありがたい。
 今回の壮絶な優勝劇を見せて貰えたことによって、楽しみが倍加した。


【Official MV】 GADORO / クズ

努力は絶対に人を裏切らねぇ その言葉に裏切られながらここまで生きてきたぜ 弱さも振りかざせば暴力 ならば俺の暴力を最後に聴いて下さい 題名は二文字 簡単です クズ

 収録曲の一つである『クズ』という曲が、YouTubeに公式アップロードされているが、既に60万再生を超えているくらいだし、想像以上の売れ行きを記録するだろう。

 この曲はメランコリックな情緒が激しいことによって、「ロマンチスト気取りかよ」「ただただダサい」みたいな批判があちこちから上がってはいるのだけれど、そうした垣根越しの意見をほったらかしにして、自分にとって意味のある作詞だと思ったことを貫いているからこそ人を惹き付けるのだと思う。

 情熱一本で這い上がってきた、希代の叩き上げラッパー。

 売れっ子になってもドラマ性を崩さない、希有な存在であり続けて欲しい。

 

ヒップホップ・ドリーム

ヒップホップ・ドリーム

 

アメリカにも自分の名前のスペルをまともに書けなくても、ラップは上手い奴はいる。それがまさにヒップホップだと思う。p26より

 こうした海外の文化と比べるのは誤りがあるかもしれないけれど、ガドロが今大会で見せてくれたのは、疑う余地もなくストリート(ある人間の有り体な生き方そのもの)の反映であったし、どこからどう見てもヒップホップだった。ヒップホップ・ドリームだった。

*1:CHASE THE CHANCE

*2:鳳仙高校というのはおそらく、クローズというマンガに登場するチンピラだらけの鳳仙学園を指していると思われる