その日ヒカルは、学生が授業を受けている教室の扉をドーンっ! と勢いよく開け放った。
……………………。
そこに存在したのは、冷ややかな視線と沈黙だけであった――
短期大学のPR依頼を受けた高卒ヒカル、まさかの屈辱を味わう!
動画の1分48秒頃からスタートする、『教室へのサプライズ入室』を見て、僕は目玉が落下するほどに驚愕した。
「今回この部屋! 入ってもいいらしいっす! 緊張するなぁ!」と笑うヒカルが扉を開けると、『鋭いナイフのごとき無反応』が襲撃して来たのだ。
約40人ほどの生徒がいたにも関わらず、時が止まったように静まりかえる空間。
いち早くヒカルは、「いやすごいなこれ……」と何一つ凄いことなど起きていないのになぜか凄みを訴え、過去に前例のない気まずい顔になっていた。
本邦初公開の、不安げな姿である。
つぶらな瞳は潰れたように細くなり、いつもはまぶしい金髪の光度もぐっと低下していた。
トレンドブログや情報商材、それから現在のYouTubeなどで、堂々と勝ち続けてきた百万長者のヒカルでさえも、『ノーリアクションには弱い』のだということが判明してしまった。
そして、付き添い人のラファエル(覆面男)に至っては、すぐさま生徒たちに背を向け、「イメージと違う!ww」と、こしょこしょ話をする始末である。
ある意味、冷え切った公開処刑の現場であった。
推定年収5億のヒカル+推定年収2億4000万のラファエル=7億4000万円の者たちが入室したのに、誰1人興味を示さない……。
無言が聞こえると表現したくなるくらいに、どぎつい静寂がそこにある。
ラファエルはともかく、YouTube界のパーフェクトヒューマンであるヒカルにとって、おそらく動画投稿史上、断トツで冷やっとさせられた回なのではないかと思われる。
それもちょっとばかし前に、2500人オフ会にて熱い眼差し、病的な歓声、万雷の拍手を受けたばかりであるから、その落差に驚きを隠せなかったことだろう。
そこで、苦し紛れに状況を一変させようとしたラファエルが、「YouTuber知ってる人居ますか?」と空元気の質問を投げかけた。
すると生徒たちは、「なんだこいつら……?」と言いたげにぎろりと横目を向け――否、もはや「我、関せず」とよそ見をしている者だらけであった。
真冬の断崖絶壁にいるのと同じ状態。
これにはさすがの自信家ヒカルも、「もうここ全カットぐらいのレベル!」と、後方にすってんころりんして黒板に後頭部をぶつけそうな勢いで、後ろ向き発言を繰り出した。
ラファエルもそこへ、「もう帰りましょうか……w」と撤退する意思を重ね、「色々すいません!」と謝罪を重ね、最後の最後に「雰囲気だけちょっと味わいたかっただけです」と言い訳のフタを被せた。
そして、苦笑しながら教室の外へと避難したのであった――
YouTuberは、小中高のキッズにしか認められない!?
今回の件で、YouTuberは低年齢向けのコンテンツであることを再確認させられた。
現時点(4/25)において、YouTubeチャンネル登録者数180万人以上、ツイッターフォロワー数45万人以上の金髪ヒカルでさえ、これっぽっちも見向きして貰えない場所が存在するという事実。
そういえば!
— ヒカル (@kinnpatuhikaru) 2017年4月22日
チャンネル登録者180万人突破しました。
ありがとうございます👍
僕に用がある方はお早めに。
日々価値はあがっていきますので🙈 pic.twitter.com/ZhN1WjEKzN
それを踏まえると、「日本一のYouTuberになるのが目標です」というヒカルの宣言を実現するには、より大量に、子供を釣り上げるための施策を打ち出して行かなくてはならないことになる。
はじめしゃちょーなき今、敵はヒカキンのみである
そしてヒカキンが厄介なのは、完全にお子様向けの動画クリエイターとしての役割を継続し続けていることだ。
その上、『親が安心して見せられる動画』のみ投稿している。
テキ屋を挑発したり、女子とハグする動画は皆無である。
であるから、ヒカルがどれだけ正攻法で頑張っても、ヒカキンを抜くのは厳しいと思われる。
ヒカキンは、人を殴るような不祥事でも起こさない限り、王座に座り続ける。
そのような高い壁をヒカルが強引に飛び越えるには、YouTuberの枠からはみ出た活動――メディアへの過剰な売り込みが必須だろう。
YouTuberではなく、芸能人として捉えられるようなポジションを獲得しなくては、ナンバー2の人生で終わってしまいかねない。
もちろん『収入の額』という一点のみで判断するならば、商才に長けるヒカルに分がある。
しかしながら、全世代に向けて「YouTuberと言えば誰?」といった質問の答えが、ヒカキンではなくヒカルになる未来を作るのは、あまりにも難解だ。
この辺のことはヒカルも100%熟知していると考えると、「日本一」を主張し続けているのは、マーケティングが主目的であり、それによって自己ブランディングを高めようという魂胆なのかもしれない。
ビジネス的な観点のみで見ると、万年2位だとしても、多額の利益を得続けることに成功しているならば、圧倒的な勝利といえる。
そういった点を鑑みると、はっきりとした数値で勝つのではなく、なんとなく雰囲気的に勝っているみたいな、曖昧模糊としたチャンピオンを目指しているといった予想も出来る。
ただしヒカルの場合は、過去にビジネスの現場で勝ち犬になった実績がある訳だから、金よりも名声を、死に物狂いで掴みに行きたくてしょうがないのかもしれない。
死ぬまで謙虚にならず尖り続けて生きたい。
— ヒカル (@kinnpatuhikaru) 2017年4月23日
賢く生きることが全てじゃない。
俺の世界は常に俺で回ってる。
本当の意味でYouTuberキングを目指すのであれば、歌手デビューレベルの話題性を作る必要があるのではないか。
是非ともヒカルには、常人には到底生み出せないアイデアでもって、ナンバーワンの座を勝ち得て欲しい。
僕たち高卒に、下克上の夢を見せて頂きたい!